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特集「首里いっぴん?玩具Road Works?」

首里ならではの伝統工芸・泡盛・伝統銘菓から新しい工芸品、そして首里らしさを大切にした「首里の逸品」をご紹介します。



琉球張り子の歴史

独特の色使いが目を引く琉球張り子。その技術は17世紀に本土から伝わり、首里の上級士族の子女を対象に作られていたと言われています。明治以降には庶民の間にも広まり、旧暦5月4日に開かれた「ユッカヌヒー」の玩具市では、我が子が元気に育つようにとの願いを込め、親が買い与える縁起物として親しまれていました。
伝統的な琉球張り子にはタワチーオーラセー(闘鶏)、鯉乗り童子、シーサーグワー(獅子)、ウッチリクブサー(起き上がり小法師)があり、その可愛らしさと滑稽さが魅力の玩具は当時の子ども達の憧れでもありました。
昭和に入り、大量生産のセルロイド製やブリキ製のおもちゃの出現により、琉球張り子は衰退の一途を辿ることとなります。しかし、今でも沖縄にはその伝統と志しを受け継ぎ、張り子を作り続ける職人達がいます。彼らの作る作品は県内外から注目を集め、工芸品や大人のための玩具として親しまれています。

古典張り子と創作張り子

「玩具Road Works」の豊永盛人さんもそのおひとり。県立芸術大学を卒業後、学生時代から住み慣れた首里に工房とショップを構え、古典張り子と創作張り子の制作を手掛けています。
「留学中に出会ったアフリカの彫刻に影響を受け、その土地ならではの作品を作りたいと思ったのがきっかけです。当初、資料はもちろん、現物も残っていなくてとても苦労しましたが、もともとオモチャが大好きでしたし、何より昔から伝わる琉球玩具や張り子を沖縄で作る事にとても意義を感じています」

張り子の工程は、土型に小麦粉で作った糊で丁寧に紙を張り、乾燥後に型から外し再び成型、それに貝の粉とニカワで作った胡粉で下地を塗り、その上から様々な色の顔料で絵付けをしていきます。多くの塗りと乾燥を繰り返し、やっとひとつの作品が出来上がる張り子作り。「中国の影響が大きいと言われる琉球文化の中で、張り子もその1つのように思います。毎年制作している十二支の張り子をはじめ、古典張り子の絵付けの際は、中国の絵柄と色使いを心がける事が多いですね。反面、現代をモチーフにした創作張り子も楽しみながら作っています。100年後は、それらが文化として残る事になるといいなと思います」

ここ数年、県外の物産展や個展の開催も増え多忙な豊永さん。訪れる土地に合わせた創作張り子も制作し、遊び心たっぷりな「琉球あいうえおカルタ」も制作中。独特のイラストとコミカルな文章が、子供から大人まで幅広い年代に大人気の商品となっています。



子ども達と触れ合う中で

工房周辺には、県立芸大をはじめ、陶芸家の松島氏や絵画家の仲本氏の工房もあることから、ちょっとしたアート地区として知られていますが、豊永さんにとって首里はどういう場所なのでしょうか。
「歴史が好きなので、僕にとって首里はとても魅力的な町です。古いものもたくさん残っているし緑も多いのでとてもリラックスできるんですよ。崎山から金城町、虎頭公園あたりが散歩コースで、家族や犬と一緒に歩くのが日課になっています」

イベントや地域行事などで、子供達を対象とした制作指導も意欲的にこなす中、昨年はご自身にもお子様が誕生。生活や仕事のペースも少しずつ変化してきたと語る豊永さん。「子供の感性って大人の概念や想像を遥かに超えていて面白いのひと言なんです。同じように教えても、まったく違うモノを作り出してくれます。子供達と接する中で、僕自身も影響を受けますし、小さな感動や発見を創作活動にいかせていけたらと思います。子育てに関わる短い期間も、自然体で楽しく過ごしていきたいですね」

豊永作品から感じる素朴で愛らしい表情は、気負いなく制作活動を行う彼自身そのもの。今後も、数少ない張り子作家としてのますますの活躍が期待されます。

琉球玩具 road works

住所:沖縄県那覇市首里当蔵町2-19
電話/FAX:(098)887-4069
営業時間:火?日曜日の午前10時?午後6時まで
定休日:月曜日